飯田市教委:監査外の報償金支払い 経験者が実態証言 「理解できない扱い」 /長野
5月27日14時1分配信 毎日新聞
◇渡航費用、家賃無支給 研修、サポートもなく
飯田市教委が行っている小中学校への外国人講師(ELT)派遣事業で、監査外の報償費約700万円を業者に支払っている問題。講師に採用された経験者の1人が26日までに、匿名を条件に毎日新聞の取材に応じた。講師経験者は市教委などと雇用契約書を交わしていなかった点や、来日旅費と通勤費の支給もなかっただけでなく、「慣れない日本での生活のサポートもほとんど受けられなかった」と証言。同事業のずさんな実態の一端が浮かび上がった。【仲村隆】
この講師経験者は、同市内の小中学校で英語授業の際の補助教員として来日し、教壇に立った。「仕事を始めてまず困惑したのは、研修やカウンセリングなどの支援態勢がなかったことだった」と指摘する。
同時期に採用されていた外国人講師のメンバーの中には全く日本語を話せない人も多く、講師経験者は「給与振り込みのための銀行口座の開き方すら分からないありさまだった。困ったことがあっても講師同士しか頼る相手がいなかった」と話す。また、市教委に相談に英語で対応できる人物が見当たらなかったことも事態に拍車をかけたとみられる。
契約社会の欧米では雇用契約書を交わすのが当たり前。しかし「勤務条件の詳細についても、ほとんど説明を受けることはなかった」と言う。採用時に勤務規則などが書かれた「受け入れの基本方針」と題する市教委からの文書が渡されたが、この経験者自身も当初、日本語の書面の内容が分からなかったという。
来日のための渡航費や賃貸住宅の家賃、交通費の補助などは、少なくともこの経験者は「受け取っていない」。一方、書面には「生徒や保護者と個人的な付き合いを禁止する」といった生活指導面の言及もあり、「行きすぎと思った」と語る。
この講師経験者は、「とても自分の国では理解できない扱いを受けたが、これが日本社会の流儀なのかと思って我慢していた」と振り返った。
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◇経緯
飯田市教育委員会は英語教育を実践する目的で、89年度から英語圏の外国人講師を招へいし、市内の小中学校へ派遣する事業を実施しており、09年度の講師は7人。市教委は、飯田市内で学習塾を経営する業者に募集や講師の世話などを委託してきたが、業者への報償費(年約700万円)がこれまで事実上、市の監査の対象外だった。領収書の提出も求めないなど市の支出の不透明さをめぐり、市民でつくる「外国人講師招へい事業を考える会」が事業見直しや講師の待遇改善などを市に陳情した。
5月27日朝刊